情報精査の能力はセキュリティエンジニア必須の能力
脆弱性のPoCと偽ってマルウェアを配信する新手のマルウェア配布方式も出ており、ますます情報の見極めの能力が問われるようになっております。千里の馬は常にあれども、伯楽は常にはあらずとも言いますが見抜けなければ良い情報があっても得られるわけではありません。玉石混交のインターネットから、有用かつ的確な判断をキーワードがプロパガンダとインテリジェンスです。
まずはプロパガンダとインテリジェンスの定義を押さえる
まずは定義を並べて書いてみます。
プロパガンダ:特定の「判断」へ誘導を促す言動
インテリジェンス:「判断」できる状態にした情報
ともに判断という文言が入っていることが判ると思います。
プロパガンダ:特定の判断へ誘導を促す言動
プロパガンダ自体は日常に溢れていて、宣伝・教育・営業・出版・報道などが該当します。皆さんがプロパガンダと聞いて悪い言葉のイメージを持つなら、
ブラックプロパガンダ:情報の発信元に隠匿、偽装がある、発信内容に虚偽が含まれている、そもそもの情報源の信憑性に欠ける宣伝活動⇄ ホワイトプロパガンダ
の方をイメージているのではと思います。これらは日本語では害悪情報や虚偽情報と表現されます。
インテリジェンス:「判断」できる状態にした情報
インテリジェンスの理解には日本語では同じ情報と表現されるインフォメーションの定義と比較すると理解でし易くなります。
インテリジェンス:「判断」できる状態にした情報
インフォメーション:「伝達」できる状態にした情報
はい、その通りです。プロパガンダもインフォメーションの一つです。
戦術の本質 完全版 進化した「戦いの原理・原則」によると自衛隊ではインフォメーションを情報資料、インテリジェンスは情報と区別しているそうです。
プロパガンダの国際的に大きな具体例を見てみましょう
プロパガンを利用した作戦として有名なものに偽旗作戦(False Flag)があります。
偽旗作戦(False Flag)とは要するに「自作自演」で敵になりすまして行動し、結果の責任を相手側になすりつけるプロパガンダです。
ナイラの証言
「イラク軍兵士がクウェートの病院から保育器に入った新生児を取り出して放置し、死に至らしめた」、その経緯を涙ながらに語った。反イラクの国際世論が形成され、日本はこのプロパガンダに1兆8000億円出資しました。
・ナイラはアメリカ国内のクウェート大使(サウード・アン=ナーセル・アッ=サバーハ)の娘で国会での証言の時までクウェートの地に足を踏み入れたことすらありません。
・ヒル・アンド・ノウルトン社が受託、キャスティング、演技指導まで実施
・新生児たちは、イラク軍に殺害された事実はないどころか イラクは侵攻後に、1,000名の医師と医薬品を送っていた
ルワンダ大虐殺
識字率が低い国民に政府与党が人道支援の名の下ラジオを提供娯楽・憩いの場として成熟した後、プロパガンダで民族紛争を誘導
「ツチ族が政権に復帰すればフツ族はまた奴隷にされてしまう
・ルワンダの「ジェノサイド」、フランスの裁判所でついに有罪判決
→数千人のフツ族の人々に対して食料、水、保護を約束すると欺いて、ムランビ技術学校に避難するよう説得したことで告発された。
4月21日未明、それまで学校を守っていたフランス軍が突然去り、残された65,000人のツチ族の人々は、銃や手榴弾で武装したフツ政権の軍や民兵、さらにはマチェット(山刀)を振って乗り込んできたフツ族の民衆によって襲撃され、未明から昼前までの間に約4.5万人から5万人が犠牲になった
ベトナム戦争のトンキン湾事件
北ベトナム軍がアメリカ軍艦を攻撃したとの一報が入った。ジョンソン米政権は、この攻撃を理由にベトナム空爆を開始。
1971年、NYタイムズ紙が機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を入手。トンキン湾事件が、アメリカによる自作自演と判明
原爆投下直後の映像を日本に提供しているのはロシア
広島平和記念資料館(旧ソ連の調査団の提供)参考:https://www.youtube.com/watch?v=EpXZJ-dIsZQ)はロシアの提供ですが、これは日ソ中立条約を一方的に破り、満州侵攻の死者約34万人、シベリア抑留の死者約6万人から目を逸らすためのプロパガンダとも取れます。他にも戦後4年で核開発成功したソ連は日本の核開発のインフラや技術を盗んでおりここから目を逸らすため核の映像資料の提供を惜しまなかったという説もあります。
戦争で用いられる鉄板のプロパガンダ「戦争プロパガンダ10の法則」
大衆の心がキャッチ出来たら、鉄壁の手順で固めます。
短いキャッチフレーズで作られた世論に真面目な反論は困難です。
「戦争プロパガンダ10の法則」ベルギーの歴史学者アンヌ・モレリ
1.「われわれは戦争をしたくない」
2.「しかし敵が一方的に戦争を望んだ」
3.「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
4.「われわれは領土や覇権のためではなく偉大な使命のために戦う」
5.「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。
だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
6.「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
7.「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
8.「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
9.「われわれの大義は神聖なものである」
10.「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」
誤った判断に誘導されないため情報の見極め方
最初に結論から、誤った判断に誘導されないため情報の見極め方は次の3つのステップで精査します。
1.誰の何の判断に影響する情報なのか目的を明確にする
2.情報源の特性を踏まえ、事実と意見を抽出する
3.発信者の意図の影響を排除する
1.誰の何の判断に影響する情報なのか目的を明確にする
人間は「嘘や噂を判断に取り込んでしまう特性」があります。しっかり皆さん自身の手綱を握ってないと影響を受けやすいのは人間の性、人間の仕様とも言えます。しかし、この特性があるからIT技術、國家、お金、宗教、仕事といった概念を共有できるとも事実です。
関連して、SANSのジョーク記事で、人間のこの特性をCVE-0とも表現されています。
CVE-0:すべての利用者には、任意のコード実行を許してしまう脆弱性が存在します。攻撃者は、巧妙に細工したメッセージを脆弱な利用者に送付することで、この脆弱性を悪用することができ、結果として、利用者のシステム上で任意のコードを実行できます。
少し脱線しましたが、情報に触れる前に『誰の何の判断のため』収集した情報か目的を見失わないことがまず第一に大切と示しました。しかし、人間はその特性上影響され見失いやすい生き物です。
これは策が必要そうですね。
目的を見失わないために気を付けるべきポイントは以下の通りとなります。
・その情報は誰が受け取り得るかを考え共有などの判断をする
・情報収集のそもそもの目的・課題を結果をみる前に思い起こす
書き出すだけでも本来の目的に外れた判断をする可能性はグッと変わるはずです。
情報を迎える心構えができたら次へ進みましょう。
2.情報源の特性を踏まえ、事実と意見を抽出する
一番大事なことは事実の抽出には情報源(一次情報)を当たることです。
一次情報:当事者、本人が発信した情報
二次情報:一次情報を見聞きしたメディア・個人が発信した情報
三次情報:二次情報を見聞きしたメディア・個人が発信した情報
テレビなどの報道を情報源とする場合は注意が必要です。というのも実質的に日本のメディアは三次情報だからです。
国際ニュースの映像のほとんどが外国の放送局から買ってきたものと言われます。CNNや協力契約上非表示で良いようにしているとのことです。
SNSも環境の特性と対策を抑えればきちんと情報収集できる
フィルターバブル
個々の利用者に最適化された情報ばかり提供され現象(機能)
対策:パーソナライズの解除(Google検索など)→&pws=0をつけるだけ
エコーチェンバー現象
閉鎖的なコミュニティ・組織の中でコミュニケーションを繰り返すことで、考え方や価値観の偏りが強化増幅されて多様性の排除を生み、より偏った方向に行ってしまう現象
対策:対抗コミュニティの情報を両論並記して判断する
サイバーカスケード
同じ思想を持つ人を繋ぎやすいインターネットの性質がもたらす、閉鎖的な環境で議論した結果、極端な世論が形成されやすくなる性質です。
対策:事実と意見を分け、意見の論拠と事実に乖離がないか判断する
日本のテレビ・新聞は情報源の特性と対策
1.不動産業と広告業へのスポンサーによって成立してる
日刊新聞法:株式が譲渡されない規制(テレビ局は新聞社が親会社であり同様)
外部影響はスポンサーによる影響が強い傾向がある。
(参考:日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律| e-Gov法令検索)
対策:発言も影響もスポンサー配慮した提供になっている前提に立つ
2.海外との違い(両論併記/引用の開示/ファクトチェック/アンカーマン)
日本版フェアネスドクトリンに当たる放送法第4条「両論併記の原則」は大半満たされていない
「四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」
CMは欧米では比較広告が大半、日本では印象広告が大半参考です。
(参考:違いが面白い!日本企業による日本向け・海外向けコマーシャル比較)
対策:対向意見を探す、海外の同テーマの記事と比較する
ここまでをまとめると
一次情報を特定する
一次情報を特定できない場合は、根拠を複数見つける
一次情報の事実から須く言えること以外は意見である
さらに精査のポイントは以下の通りです。
意見の発せられた情報源の特性を除く
情報源が示されない情報は判断に使用しない
意見の論拠と一次情報の乖離があるか確認する
判断や他者への伝達には対向意見と比較し余計な部分を削ぐ
3.発信者の意図の影響を排除する
フェイクニュース・デマ・ゴシップ‥一旦整理しましょう。ゴシップは単なる噂話なので本来区分はされません。
危害を加える意図あり | 危害を加える意図なし | |
伝達内容は正確 | 害悪情報 | ここを更に精査する |
伝達内容は誤り | 虚偽情報(フェイクニュース) | 誤情報(デマ) |
陰謀論とは一般的によく知られた事件や歴史の背後に別の策略があったとして考察された信憑性に乏しい論議(陰謀論は相対的で主観的)のことを示します。
結論、情報を扱う人間としては初めから最後まで全て出鱈目と断言できない限り同調しないが責任ある言動と言えます。
そもそも一般的に知られている事自体が現段階でも仮説であることも多いという事実も知らなければなりません。飛行機が飛んでいる理由として知られるベルヌーイの原理も仮説に過ぎません。
例:飛行機が空を飛ぶ原理(ベルヌーイの原理)は仮説
危害を加える意図があっても内容が正確なら問題ないのではと感じた方は、次のプロパガンダ手法を読んで頂くと納得できるかと思います。
危害を加える意図として害悪情報や虚偽情報で用いられるプロパガンダ手法
ここからは伝達内容自体は事実であっても危害を加えるように誘導可能な有名なプロパガンダ手法を3つ紹介します。
1.チェリーピックング:持論に都合のいい事実だけ取り上げ不都合を排除するプロパガンダ手法
都合の良い事実も個々は正しい内容なので伝達内容に誤りはありませんが判断を意図的に誘導しています。
①全鳥類飛翔:雀は飛ぶ、鶴も飛ぶ、鷹も飛ぶだから鳥類は空を飛ぶものである
↑ 個別は真実ですが全体の論はおかしいと判ります。
飛ばない鳥、ペンギンやニュージーランドの国鳥キーウィなどを一例あげれば論破できます。
②北極の氷が溶けてホッキョクグマが住みにくくなっている
氷に取り残された画像とともにホッキョクグマの危機を訴えている画像を見たことがあるのではないでしょうか。実際は継続的な全量調査では増加傾向です。これも事実の都合の良い場所だけ切り取るプロパガンダです。
文字情報より印象を残し誘導するイメージプロパガンダです
2.白黒の誤謬:選択肢を意図的に少なくし誘導するプロパガンダ手法
①壺を買わないと不幸になる(いい大学入らないと幸せにならないも同類)
↑ 幸福な人は必ず壺を買っているかで検証するだけで対応可能です。
②悪いのはウクライナかロシアか
ウクライナが悪いか、ロシアが悪いの2択に誘導していますが、
ウクライナ・ロシアが両方悪い、ウクライナ・ロシアが両方悪くはないの2択が除かれています
また、「悪い」という定義次第で意味が変わる言葉を使うことで多義の誤謬にもなってます。
このプロパガンダは選択肢や中心となる言葉を整理するだけで対応はできます。
3.ストローマン論法:単純化・極論に持っていって論点をすり替える
A:私は雨の日が嫌いだ(個人的な感想や価値観)
B:もし雨が降らなかったら農作物も育たず餓死者が増える
Aはそんな苦しんでいる人の前でもそんなことをいうのか!!(必要性)
相手が主張していない事を自分に都合の良いように表現し直しさも相手が言ったかのように取り上げ論破するプロパガンダ手法です。
※ひろ◯きよく使ってますね
ひろ◯きが使用した例としては「主演者に不祥事があった時に作品を止めるべきか」に対し「犯罪で注目を集めて、金さえ儲かれば何してもいいって事ですね。怖いですね」と論破しやすい表現に改竄し言い包めてました。「お金擦りまくったらハイパーインフレになる」なども同類です。
対策:どの立ち位置かどの観点で話ているか最初に明言する
実は「雨の日」の例でAは冒頭に「個人的な感想ですが」とつけるなどすればストローマン論法は成立しませんでした。
いよいよ実際の例で、情報精査を実践しましょう
ここまでの知識で実際の世の中の実例で精査してみましょう。世の中の情報を冷静に見れるようになるはずです。
「CO2を2050年までに排出ゼロにすれば地球温暖化を止めれる」を考えてみる
そもそもの温暖化とCO2の関係
地球温暖化:採用している気温が東京の方が沖縄より高いもの逆のものがある
都市化によるヒートアイランド現象を除くと気温は低下傾向
都市を含めると皆さんご存じ上昇傾向
CO2より都市化の方が大きな要因→事実の抽出
CO2をゼロにした場合の効果(30年)は0.0065℃
(詳しい計算は参考:地球温暖化のファクトフルネス)
意図はともかく「CO2を2050年までに排出ゼロにすれば地球温暖化を止めれる」は有効な主張ではないと判断できます
「伝染」予防効果のテストは実施されていないを考えてみる
欧州議会のロブ・ルース議員の「ファイザーのコロナワクチンは、発売前に伝染予防のテストをしたか」との質問に対して、ファイザーの国際先進国市場担当社長のジャニン・スモール氏は「いいえ、私たちは市場で起こっていることを把握するために、『科学のスピード』で動かなければならなかった」と否定した。
53秒あたりから
🚨 BREAKING:
In COVID hearing, #Pfizer director admits: #vaccine was never tested on preventing transmission.
"Get vaccinated for others" was always a lie.
The only purpose of the #COVID passport: forcing people to get vaccinated.
The world needs to know. Share this video! ⤵️ pic.twitter.com/su1WqgB4dO
— Rob Roos MEP 🇳🇱 (@Rob_Roos) October 11, 2022
Was the Pfizer COVID vaccine tested on stopping the transmission of the virus before it entered the market
さて、この部分から事実と意見を分別してみましょう
この情報は当初から公開されており、ファイザー社役員が答えた欧州委員会で新たに明らかになった新事実ではない(日本ファクトチェックセンター(JFC))
https://factcheckcenter.jp/n/n6192169cceac
当然、日本ファクトチェックセンターの情報も鵜呑みにしないでください。
事実はワクチンが市場に出る前に「伝染」予防効果のテストは実施されていないです。
ワクチンの元々の原理上、感染を防ぐ目的であり、伝染を防ぐならくしゃみをさせないといった薬効が要求されることになり不合理です。
政治家の多くが「人に伝染させないためにも打ちましょう」と事実無根で発言していたことになります。
「スキャンダラスだ」などと発言している部分は事実ではなく意見です。
立場に基づいた主張である以上一種のプロパガンダです。
最後に炎上とプロパガンダに関して
現実的な論争にはどんな構成になっているか発言者はどこに位置付けられているかを把握し論議が有効か判断する必要性があります。分からずに突っ込むと文字通りヤケドします。
派閥A派閥B
派閥Aのふりをした派閥B
派閥Bのふりをした派閥A
ただ口論を目的に参加する者
注目されたいがためネットミームを並べる者
信者的に反論にもなっていない全肯定を加え横車を入れ台無しにする者
少なくとも上にあるような位置付けと力点や外力(資本の流れ)などを把握した上でそもそも目的を明確に対応することが大切です。知識の備えなけれな意図も簡単に掌で転がされます。
以上です。参考になれば幸いです。